2017年9月に金融庁が立入り調査!変わらざるを得なくなった銀行カードローン

遂に動き出した金融庁!立入り調査の内容と狙いとは?

総量規制対象外という強みを最大限に生かし、貸付残高を伸ばし続けた銀行カードローン。
消費者金融化したその体制に、遂に金融庁が動き出しました。

2017年9月1日に開かれた記者会見。
麻生太郎金融相は「銀行カードローンの適正化を推進したい、業務運営の実態を把握したい」との主旨の下、大規模な銀行の立入り調査を実施することを発表したのです。
調査の内容としては次の5つが主な項目でした。

1.過剰な貸付を防ぐ審査体制が構築されているか
2.保証会社へ審査を依存し過ぎていないか
3.広告宣伝は配慮されているか
4.カードローン獲得が行員の評価項目になっていないか
5.融資後の顧客の状況の変化を把握できているか

しかし、当初はこの発表について「選挙前のパフォーマンスでは?」という声がありました。
その時期は衆議院解散総選挙を控えていましたが、そもそも選挙のタイミング自体に不信感が漂っていたのです。
「森友・家計疑惑」の渦中であり、北朝鮮情勢も不安定な中、不祥事や問題を封じるための逃げの一手、そう捉えられても仕方のない解散総選挙でした。

銀行カードローンの過剰融資は野放し、金融庁は何もしなのいか!と不満も高まる中で発表された銀行の立入り調査。
金融庁が民間への立入り調査について事前に公表することは異例のこと、しかも検査の内容についても事前に公表されたのです。
つまり銀行には、ヤバいものを隠す術と時間があるということ。
このような背景から、立入り調査は単なる選挙対策であるという見方が強まっていたのです。

金融庁はあくまでも、利用者保護を浸透させるといういう目的を掲げていました。
しかし、立入り調査で一番の注目となる銀行の総量規制の導入に関しては、まだ議論が詰まっている段階ではない、と慎重な姿勢を見せていたのです。

銀行カードローンに強いられた自主規制

この立入り調査の前から、多くの銀行はカードローンの自主規制に踏み切っていました。
そのきっかけとなったのは、2016年9月に日本弁護士連合会から提出された意見書です。
その中では「銀行等の行う貸付けに保証を付す場合についても総量規制の対象とすべきである」と厳しく言及されています。

意見書の内容は、つまり「銀行は消費者にお金を貸し過ぎている!防止策を講じなさい!」という注意喚起です。
それを受けて全国銀行協会は申し合わせ、2017年4月から3大メガバンクを中心に銀行は自主規制に乗り出したのです。

規制はあくまで自主的なものなので銀行によって多少の違いはありますが、基本的には以下の3点が主に取り組まれました。

収入証明書の提出額の変更
借入希望額が50万円以上、または他社と合算して100万円を超える場合、と貸金業法のルールに合わせる

収入と融資額のバランスを重視
みずほ銀行は「融資限度額を年収の1/3まで」と総量規制に合わせ、他行も収入証明の提出額を引き下げたことにより審査を厳格にする姿勢を見せた

広告・宣伝の自主規制
借入の必要のない人にも影響を与えるような過剰な宣伝を自粛
「総量規制対象外」「収入証明不要」「専業主婦OK」の文言が消え、CM放送回数も激減

立入り調査はどのような結果へ?

選挙対策、銀行業界への警告のパフォーマンス、とも読まれていた立入り調査。
銀行側の自主規制の取り組みもあり、「改善されつつある、利用者保護はおおむねなされている」といった形だけの調査で終わり、結局何も変わらないのでは?とも考えられていました。
しかし、蓋を開けてみると、調査は意外な方向へ進んでいったのです。

金融庁は、銀行が実施した自主規制を厳しく追及していきました。
収入証明の提出基準の変更など、評価される項目もありましたが、改善の余地があると多くの点が指摘されました。
融資後の顧客の状況を把握していない、融資の際に他行からの借入状況が度外視されている、保証会社の消費者金融に審査を依存し過ぎている、など自主規制の不十分さが露見されたのです。

2017年10月からは、各銀行に毎月の融資残高の報告が義務付けられました。
さらに、全国銀行協会が報告結果を公表することになり、過剰融資への対策も強化されたのです。
また銀行カードローンは「保証会社任せだった審査を、銀行内でも基準を設ける」などの審査の厳格化、「無収入の専業主婦や、収入が年金のみの利用者に対しての融資の自粛」と、返済が厳しいと予想される利用者への対策など、新たな自主規制を強いられることになりました。

この立入り調査はパフォーマンスどころではなく、金融庁の本気度の高さを示すものとなりました。
そして、2018年1月からの銀行カードローンへの規制強化に向けての舵切りとなったのです。

メガバンクの自主的な総量規制に隠された本心は?

立入り調査の最中の2017年10月、三菱東京UFJ銀行・三井住友銀行・みずほ銀行は自主的な総量規制を導入に踏み切りました。
みずほ銀行は、2017年4月から貸付上限額を「年収の1/3」と総量規制に合わせていましたが、他の2行も「年収の1/2や1/3までとする」と、総量規制に寄せてきたのです。

今まで、融資額と収入のバランスを考えるといった自主規制は打ち出しながらも、具体的な貸付上限額に対しては言葉を濁してきた銀行。
メガバンクは何故このタイミングで自主的な総量規制の導入を決めたのでしょうか?

そこには「何としても総量規制の法的な導入は避けたい!」という切実な願いが隠れています。
銀行はカードローンにより貸付残高こそ急激に伸びましたが、マイナス金利の影響はまだ色濃くメガバンクの業績は芳しいとは言えません。
世論が注目した立入り調査の焦点は「銀行が総量規制の対象になるか?」でした。
もし銀行に正式に総量規制が導入されることが決定されたなら、そのニュースは一気に拡散されて銀行カードローンの利用者は目に見えて減ることは安易に予想されました。

自主規制というのは、あくまで自主的なルールであり規制に反しても法的な罰則が課せられるわけではありません。
極端に言えば、ルール違反をしても自社でもっともらしい理由が付けられるのです。
利益の見込めるカードローン事業はこのまま伸ばし続けたい!その願いから、自主的な総量規制という隠れ蓑で体制を守りたい、というのが本心でしょう。
今後もメガバンクは、総量規制の法制化を必死に阻止してくると考えられます。

銀行カードローンの規制強化への幕が開いた!

銀行カードローンの過剰融資は度を過ぎたものであると、認知を深める形になった金融庁の立入り調査。
銀行カードローンは自己破産の温床、とまで言われるほどに、その融資体制の問題は金融庁としても放置できなくなったのです。

総量規制の法的な導入こそまぬがれましたが、銀行カードローンへの本格的な規制強化の幕が開いたと言っていいでしょう。
立入り調査の翌年、2018年1月からは具体的な規制が施行され、銀行カードローンはますます苦しい立場に追い込まれます。

しかし、銀行もカードローンが本来の主な業務ではないことを理解しています。
いつまでもカードローンの収益に頼ってはいられないということも経営陣は周知していることでしょう。
変わらざるを得なくなった銀行はどのような道筋を模索するのか?
そして新たな規制によって、利用者もまた「お金を借りる」という意識に変化を求められることになりそうです。