総量規制対象外!収入証明不要!と貸付残高を伸ばし続けた銀行カードローン

法律改正から始まった銀行カードローンの快進撃

個人向けの融資として利用しやすく人気なのがカードローンです。
一昔前なら、個人で借りるのなら消費者金融という選択が主流でした。
しかし、ある法律改正をきっかけに銀行カードローンの快進撃が始まったのです。

ある法律、それは「貸金業法」です。
旧名称「貸金業の規制等に関する法律」は、1983年に公布・施行され、2003年と2006年の二度の改正を経て現在に至っています。
貸金業法は、消費者金融などの貸金業者を対象に、それら貸金業者からの借入れについて定められた法律です。
貸金業法は、個人の過剰な借入れとグレーゾーン金利による多重債務問題の解決を主旨として成立され、段階的な施行を踏み、2010年の6月に全ての規定が施行されました。

【グレーゾーン金利とは?】
2010年6月17日以前、利息制限法の上限金利は20.0%、出資法の上限金利は29.2%だった。
しかし、上限金利を超えての利息に罰則が課せられるのは出資法だけであったため、多くの貸金業者は法律の盲点につけこみ20.0%~29.2%の間の違法な金利を適用していた。
その曖昧だった違法な金利をグレーゾーン金利と呼ぶ。
現在は、利息制限法と出資法、共に上限金利は20.0%。

 

この貸金業法が銀行カードローンに有利に働いたのは、「総量規制」の部分です。
総量規制とは、個人が借入れできる金額の上限を年収によって制限する規制です。
その金額の制限は年収の1/3までとし、借入残高がその制限を超えてしまうと新規の借入れはできません。
総量規制は、支払い能力を超えた借入れを制限し、多重債務者を減らすことを目的としているのです。

総量規制の対象は、消費者金融やクレジットカード会社などの貸金業者です。
銀行を始め、信用金庫、信用組合、労働金庫などが行う様々な融資は対象外なのです。
これにより、消費者金融のカードローンで希望の金額を借りられない人達が一斉に銀行カードローンに目を向けたのです。
総量規制対象外の銀行カードローンは、利用者にとって非常に借りやすい身近な存在になりました。
そうして、銀行カードローンは貸金業法の完全施行された2010年あたりから貸付残高が急増したのです。

貸付残高増!総量規制が本末転倒に?

銀行カードローンは、一体どのくらい貸付残高を伸ばしたのでしょうか?
金融庁が実施した銀行カードローン検査によると、2011年度末に3.3兆円だった貸付残高は、2017年度中間期では5.8兆円と、5年半でおよそ2倍に迫る勢いで伸びています。
2011年までの貸付残高は数年間ほぼ横ばいだったので、この勢いの原因が貸金業法の完全施行なのは明らかでしょう。

総量規制対象外という武器を手にした銀行カードローン、さらに利用客を引き付けたアピールポイントがあります。
それは「収入証明不要」という謳い文句です。
消費者金融などは、貸金業法により1社の借入額が50万円を超える場合、または他社の借入金額との合算額が100万円以上の場合は収入証明書の提出が義務付けられています。
しかし、銀行カードローンでは貸金業法ではなく銀行法が適用されています。
銀行法では、収入証明書の取り扱いに関して細かい規制がありません。
そのため、各銀行は独自の判断で収入証明書が必要な借入額を決めることができたのです。
実際に、年収の二倍以上の融資や無収入の人への多額の融資と言った事例も多数報告されています。
その多くは、貸金業者で審査に落ちた人達への融資であり、返済出来ずに自己破産をする人も増えました。

また、貸金業法で広告の自主規制が求められた消費者金融は、テレビCMなどの本数や流す時間帯を制限しました。
それに対し、銀行カードローンは時間帯こそテレビ局からの制限はありますが本数には上限がなく、消費者金融のテレビCMの数を大きく上回ったのです。
銀行という響きは消費者金融に比べてクリーンで、安心感もあります。
「銀行ならお金を借りる後ろめたさも少ない」そんな債務者の心理にも上手くシンクロした銀行カードローンの戦略。
その結果、借入残高の急増という総量規制の目的に反した本末転倒な事態を引き起こしたのです。

消費者金融が続々と銀行の傘下になったのは何故?

銀行カードローンの好調の裏で、消費者金融はどんどん追い込まれていきました。
貸金業法自体が、消費者金融の利用を減らす内容となっていますが、さらなる打撃は出資法の上限金利の改正です。
先にも述べましたが、消費者金融など貸金業者はグレーゾーン金利によって不当な金利を得てい
ました。
しかし、出資法の上限金利も利息制限法と同じく20.0%になったため、金利での収入が大幅に減少した上に、債務者が過払い金請求を行えるようになったのです。
過払い金とは、グレーゾーン金利により払いすぎてしまった金利、それを返還請求できるのが過払い金請求です。
債務者にとっては大変喜ばしい事ですが、このことにより消費者金融を始めとする貸金業界は窮地に追い込まれたのです。

過払い金返還のダメージは大きく、小規模の消費者金融の多くは廃業し、大手消費者金融も深刻な経営難に陥りました。
そして、アコムを始めとする大手消費者金融のほとんどが銀行の傘下になることで廃業を逃れたのです。
消費者金融にとってはまさに救いの手ですが、銀行側にもメリットがありました。
企業融資が主であった銀行は、個人融資に関しての体制はまだまだ不十分でした。
しかし、消費者金融を傘下にすることで、銀行は個人融資のあらゆるノウハウを得ることができたのです。
また、銀行カードローンの多くは保証会社を消費者金融に託しています。
保証会社は、融資の返済が無い場合は代位弁済(代わりに返済)をしてくれます。
もちろん保証会社である消費者金融に保証料を支払うことになります。
しかし、融資先の返済不能のリスクが回避できるため、銀行カードローンはますます強気の融資が行えるようになったのです。

銀行カードローンの今後の展開はどうなる?

総量規制対象外、収入証明不要、この二本柱が功を奏し、銀行カードローンは破竹のごとく貸付残高を伸ばし続けました。
また、消費者金融を傘下にし、個人向けの融資にますます力を入れ続けた銀行。
マイナス金利の影響を受け厳しい状況にあった銀行にとってカードローン事業の金利収入は大きく、力を入れるのも納得です。
銀行だって会社である以上、利益を見込めるビジネスに熱心になるのは当然でしょう。

しかし、基本に戻って考えると貸金業法は何のために成立し施行されたのでしょうか?
総量規制の趣旨に反した銀行カードローンの体制に対して、2016年9月に日本弁護士連合会からは「銀行等による過剰貸付の防止を求める意見書」が提出されました。
そうして、銀行カードローンの過剰な貸付は社会的な問題となり規制を求める声が高まってきたのです。
まるで消費者金融化した銀行カードローンは、低金利で借りやすいという利用者にとってのメリットもあります。
しかし、結果的に借金苦の人口を増やし続けるような現状は、見過ごすわけにはいかなくなったようです。
世論の声に押され、ついに金融庁も動き出しました。
『2017年9月に金融庁が立入り調査!変わらざるを得なくなった銀行カードローン』に続く。